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 私と涼太先輩は、それから一時間程ペルセウス座流星群を観ていた。他に、ペルセウス座流星群を観測している人達がいたけれど、二人きりでいる時間がとても大切で、愛おしいものだった。 「夏稀、そろそろ帰るか」 「――はい」  そろそろ帰らなきゃね。名残惜しいけれど、夜も遅いので仕方ないか。  二人でロープウェイに乗って、日高山から帰り始める。もう遅い時間で、街の暗がりを帰るという事で、涼太先輩が自宅まで送ってくれた。道中も、夜空に星々と共に時々、明るい流れ星が見えて、私と涼太先輩はその度一喜一憂した。 「じゃあ、またな、夏稀。今日は本当にありがとう」 「はい、先輩!こちらこそ、今日は本当にありがとうございます!」 「またな」  涼太先輩と私の自宅の前で別れて、家の中に入った。「今日はありがとう、キュリル――」キュリルに話し掛けてみたが、トートバッグの中で大人しくしているのか返事がない。時間を確認すると、夜の十一時だった。  父と母は心配していただろう。両親に、帰りを報告する。 「ただ今、父さん、母さん」 両親には、涼太先輩と出掛ける事は話していた。 「おかえり、夏稀」 「大丈夫か?」  私は、答えた。 「大丈夫。涼太先輩、凄く優しくて……。流れ星、凄く綺麗だった」 「そうか、ならいいんだ」 「夏稀が幸せなら、それでいいのよ」 父と母は、そう言ってくれた。 「うん、ありがとう」  私の両親は、高校一年生の私のする事に、理解があるんだな……。優しい両親に、私は深く感謝した。  お風呂に入って、寝間着で部屋に戻る。美緒と一美から、LINEが届いていた。 一美 涼太先輩と、流れ星観るの、どうだった? 美緒 私達にも、教えてよね  二人の問いに、私は答えた。 夏稀 上手くいったわ。涼太先輩、凄く優しかった 一美 上手くいったのね 美緒 夏稀が涼太先輩って呼んでる!進展したのね! 夏稀 うん――  美緒と一美は私を祝福してくれた。二人とのLINEを終えて、再びLINEを見ると、涼太先輩から連絡が着ていた。 (先輩!) 涼太 夏稀、今日はありがとう。ペルセウス座流星群、明日十三日の未明まで見えるから、良かったら観てくれな 夏稀 分かりました!はい、私からも言わせてください。今日はありがとうございます! 涼太 また明日な 夏稀 はい、また明日! 涼太先輩とのLINEを終えて、寝る準備をする。今日は、本当に素敵だったな。流れ星を一緒に観て、ロマンチックな時間を過ごして……。 (今日は、涼太先輩とキスしたのよね――)  振り返って恥ずかしくなって、「キャー!」と声を上げ、ベッドの上で足をバタバタさせて喜ぶ私。 「キュリル、貴方にも、ありがとうって言わなきゃね」  キュリルのぬいぐるみを見たけれど、返答はなかった。いつもなら「キュルー!」と鳴いて部屋中を飛び回るのに……。  その日は、そのまま眠りに就いた。キュリルの返事がないので気になるけれど、涼太先輩とのペルセウス座流星群観測を振り返ると、幸せな夢を見られそうだ。  夜、涼太先輩と夜空の星の中に流れ星を見つけて、綺麗だな。と二人で手と手を繋いでいる。幸せだ。  すると場面が変わって、キュリルが現れた。キュリルは「夏稀ちゃん、良かったね。おめでとうなの!」と言って空中に浮いている。 「キュリル、ありがとう」  お礼を言う私に、キュリルは寂しそうにしていた。 「これは、夏稀ちゃんの夢の中なの。キュリルは、魔法をいっぱい使ったから凄く疲れたのなの。だから、妖精の国で長い間休むの。夏稀ちゃんの想い、凄く受け取ったの。夏稀ちゃん、またねなの。サヨナラなの。ありがとうなの」 「キュリル?」  キュリルは、何処か向こう側に向かって、消えていった。キュリルが、いなくなる? 「キュリル、キュリル!」 「キュリルー!」  はっ、と私はベッドから飛び起きた。夢から覚めたのだ。時計を見ると、夜の三時だった。 「キュリル?」  キュリルのぬいぐるみは、そこにあった。でも、返事がない。 「キュリル、居なくなっちゃたのかな……」  キュリルが居ないと思うと、寂しさが感じられた。キュリルは私の中で、大切な存在になっている。  涼太先輩に言われた事を思い出して、窓を開けて夜空を眺める。ペルセウス座流星群、明日十三日の未明まで見えるから、良かったら観てくれな……。  空から、一条の光が降り注いだ。  私はその夜、再び眠りに就いた。
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