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「うーん、このかき氷――美味しい!」
私と先輩はかき氷を堪能していた。先輩も「冷たくて、美味しいな」と同調してくれる。かき氷は、私と先輩の間にその冷たさとは違っている、とても温かい時間をくれる。
――もう、夕飯時が近づいていた。夕飯が終われば、七時半から始まる天体ショー、その後夏祭りのメインイベントである花火が始まる。先輩に、告白するのだ。私は不安と緊張、そして、淡い様で大きな期待を持って、その時を見計らっていた。
夕飯は、先輩お勧めの商店街の食堂で、味噌ラーメンを食べた。『デート』に味噌ラーメンという不釣り合いな気がする組み合わせだけれど、味噌ラーメンが、スープはしっとりする中にしっかり味が染みて、麺はツルツル、シコシコ。具ももやしがシャキ、葱もナルトも美味しくて、そして叉焼はスープに合い肉厚で、とても美味しかった。先輩が「ここのラーメン、美味いだろ」と上機嫌で言う。先輩は、美味しい店も知ってるのね、と感心した。
そして、街の川沿いの橋に私達は着いた。ここで天体ショーをやり、そして花火が観賞できる場所だ。
やがて、川沿いとその周辺がライトアップされ、天体ショーが始まる時間になる。
「いよいよだな」
先輩は臨み、私も壮大でロマンチックな雰囲気を感じ、ドキドキしてきた。
「キュルキュル―!」
空は、とても快晴だ。あの時に佐伯先輩と空を見上げた様に、星々は美しく、綺麗で、再び先輩と星を観察している事が、とても素敵で満足できた。
やがてアナウンスが鳴り、天体ショーが始まる。常設してある拡声器から、声が聞こえてきた。
「夜空に輝く天の川を見上げてください。その中に明るい五つの星が十字架の形に並んでいる星、夏の星座の代表格のはくちょう座です」
アナウンスは、夏の大三角形について語るようだ。――あの時、佐伯先輩が語ってくれた事が蘇り、私は胸の鼓動の高鳴りを覚えていた。
「始まったな」
先輩は、天体の事をアナウンスで述べている事。そして、星々の事を扱っている事そのものが嬉しい様な感じがする。やっぱり星が好きなんだな。――佐伯先輩が星が好きな事、好きなものがあるんだな、という事にも私は惹かれているんだなと気づく。
「そのはくちょう座の一等星デネブから、天の川に沿って南に目を向けて見えるのが、わし座の一等星アルタイルとこと座の一等星ベガです」
「この三つの一等星を結んで見てください。とても大きな三角形が出来ます。それが、夏の大三角形です!」
アナウンスは、あの時佐伯先輩の言っていた事そのままに、夏の大三角形について語っていく。それから、夏祭りの粋な計らいの、何かが起こるようだ。
「七夕伝説の織姫星と彦星は、アルタイルとベガだと言われています。――ご覧ください!織姫と彦星の、出会いの時です!」
川の対岸と対岸から、空中に大きな船を渡して、ここから見ても分かる様に、織姫と彦星が出会いの時を迎えていた。どうやら空中の船は、川の下からと川の横から、それとクレーンの様な機械で上から支えられている。よく見ると、空中の船は織姫と彦星のオブジェの他に、織姫と彦星の格好をした男女が乗っていた。その船と船は、川の真ん中まで来て、織姫と彦星の逢瀬が叶う。
「皆さん、織姫と彦星の出会いの時が訪れました!」
観衆から「ワァー!」という歓声が拡がる。天体ショーは最高潮を迎え、夏祭りの会場は素敵な空気が流れている。
(そうだ、今、先輩に告白しよう)
そう思った。今なら、言える気がする。
「佐伯先輩!」
大声で先輩の名を呼んだ。佐伯先輩は、なに?という顔をして、こちらに目を向ける。
「何だ、池澤、そんな真剣な顔して」
先輩に驚いた顔をさせる私。先輩は不思議そうにこちらを向いている。そうだ、勇気を出して、言おう。
「先輩に、言いたい事があります!」
「キュルー、キュルキュル―!」
その時、何かが背中を押してくれた。
そして、言った。
「私、佐伯先輩の事が好きです!私と、付き合ってください!」
遂に、言葉にする。
佐伯先輩は、その言葉を聞くと、とても優しそうな顔をした。そして、考えて、真剣な顔をすると、こう答えた。
「うん、うん。ありがとう、分かった。こんな僕で良ければ、ぜひ付き合ってください」
ヒューン、ドーン!
その時、夏祭りの花火イベントが始まった。花火は音響を響かせ輝き、その鳴動と閃光で、人々の歓声を受けている。そして、私の想いは通じて、半分泣きべそで嬉し泣きをしてしまった。
「ありがとう、先輩、ありがとうございます!」
どうしてか先輩に感謝の言葉を述べていた。私の想いは嬉しいのと感動しているので、凄く高ぶっていたが、先輩は優しくしてくれる。
「池澤、こちらこそ、ありがとう」
先輩は優しい。ああ、やっぱり佐伯先輩を好きで良かったな。
美緒と一美が、夏稀と涼太が居る橋の端から、二人の縁を祝福していた。
夏の花火は、訪れる観衆をその輝きで魅了し、夜の空に美しき花を咲かせる。夏稀は、涼太と見る花火が、まるで自分達を祝福している様に感じていた。
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