おやすみ

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ベッドに横たわるのは俺の母ちゃん。 中学の頃は、かっこつけて“お袋”なんて呼んでたけど、やっぱり母ちゃんの方がしっくりくる。   母ちゃんは、安っぽい入院着を着て、いろんな管をつけて苦しそうに息をしていた。   俺の家は母子家庭だった。 親父は俺が物心つく前に海で死んだ。 母ちゃんは、女手ひとつで俺を育ててくれた。 こんな何もない町で、安い給料で朝から晩まで働いていた。 母ちゃんは気の強い人で、怒るととても怖かった。 だけど、やさしくて料理上手な人でもあった。   子供の頃は、友達の若くて綺麗なお母さんと違って、疲れて白髪の混じった恰幅のいい母ちゃんが恥ずかしかった。 だけど、大きい体で抱きしめられるととてもほっとした。 学校で同級生と喧嘩した時も、母ちゃんはその大きな胸に俺を抱き寄せて、俺の話を聞いてくれた。
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