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「…あ」
声が聞こえた。
俺ははっとなって母ちゃんの顔を見る。
確かに、目があった気がした。
「母ちゃん?」
不気味な電子音が鳴って我に返る。
俺は慌ててナースコールのボタンを押した。
その間も、俺は母ちゃんから目を離すことができなかった。
目を離した隙に、母ちゃんが消えてしまいそうで怖かった。
さっきまで苦しそうに寄せられていた眉が、やさしく下がる。
唇の端が力なく持ち上げられる。
母ちゃんは、笑っていた。
心配する俺に、大丈夫だって言うように。
視界が滲む。
母ちゃんの顔を見ていたいのに、うまく見えなくなる。
「母ちゃんッ」
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