私は彼の消しゴム

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私は暫く考えた。 考えたけれど、今更、両想いであることを知ったところで消しゴムである私に出来ることは何もなかった。 彼は便箋を白紙のまま提出した後、悲しげな表情を浮かべている。 ホームルームが終わっても席を立たず、外の雨を眺めている彼に対して、私は声をかける事も文字を書く事もできない。 どうして消しゴムなんかになってしまったのだろうか。 '彼は私なんかを相手にしない'そう勝手に決めつけ、私は彼の事を知ろうともしていなかった。 行動さえしていれば、状況は変わっていたかも知れないのに。 私は強がって、自分の想いを自ら消していた。 「あ、。」 彼の声がして、私は机から落下した。 どうやら彼の肘が私にぶつかったらしい。 落下した私を、たまたま通りかかった香苗が拾った。 「あ、ありがとう。」 香苗は私を彼に手渡しする。 その時に私の身体を凝視したので、私が消しゴムになっている事に気が付いたのかと思った。 「ねぇ、このAって?。」 「あー、特に意味はないよ。」 「あ、そう…。」 「あのさ、柊木さんの容体、どう?。」 「なんで茜のこと私に聞くの?。」 「仲良さそうだったから。病院も行ってるのかなって。」 「行ってるよ。毎日。けど、医者にも分からないんだって。」 「そっか。」 「このAって、もしかして茜…?。」 「いや、まあそれは…。」 「ふふ、。」 「おかしい?。」 「んーん。きっとこれ知ったらあの子喜ぶだろうなーと思って。」 私は勿論、この時も何も言えなかった。
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