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「──ぎゃあああっ!!!」
「っ!!?」
回想にふけっている俺の耳に野太い叫び声が飛び込んでくる。ついでに雄っぱいが飛び込んでくる。
「カオル! ごき……ゴキブっ……ゴキブリがぁあっ!!」
「〜〜〜っ!!」
思いっきり雄っぱい男、いやダイチに抱き着かれた俺はムッキムキなその胸に埋もれて息が出来ない。
バンバン叩いてようやく開放された俺はダイチを見上げながら睨みつけた。
「おっまえ……殺す気か! ゴキブリぐらい自分で何とかしろ! なんの為の筋肉だ!!」
「筋肉じゃゴキブリには勝てない!」
「だったら文明の道具を使え! 殺虫剤あんだろが!」
ギャーギャーと喧嘩しながらも結局俺が退治するはめになって、読み終えた無料雑誌で一度で仕留めた。
後始末まで俺が行って、ようやくダイチは落ち着く。
「いや〜、カオルが居てくれてよかった。怖かった……」
「ゴキブリもお前みたいなムキムキに叫ばれて怖かったろうよ」
手を洗う俺に背後から抱きつきながらダイチが頭上で泣き言を言ってくる。
ダイチの声は頭上から聞こえるが、別に俺は低身長じゃない。どちらかと言えば高い方だ。
だがこいつがデカすぎる。何センチあるのかは悔しいから訊いたことはない。
「カオル……もう結婚しよう。俺はお前なしじゃ生きていけない……」
「そうな、料理も出来ねぇ掃除も出来ねぇおまけにゴキブリ一匹も退治出来ねぇんじゃ一人じゃ暮らせねぇよな。米の研ぎ方すら知らねぇやつ初めて会ったわ。今までどうやって生きてきたんだ」
「家事代行頼んでた。高かった……」
「そんなんだから雄っパブなんかで働くはめになんだよ!!」
そう、こいつは親からそれなりに仕送りをもらっている筈なのにいつも金欠だった。
生活能力が皆無だったから他に頼らざるを得なかったのだ。
その金欠策が雄っパブでのバイトだったんだと。
給料が良かったかららしいがぶっちゃけこいつ馬鹿かと思った。
家事代行を雇って食事もほぼ外食となればそりゃ金も無くなるわな。
今は俺が家事を代行しているわけだが、俺だって家事が完璧な訳では無い。
今までかーちゃんに頼りっきりだったから見様見真似なのだが、それでもダイチよりはマシだしコイツも文句を言わないのでそのまま続けている。
以前グラタン作って大失敗した時も美味い美味いと言いながら完食したしな。そこら辺は良い奴だと思うよ。
家賃はこいつ持ちだし。
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