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未来へ青島からメッセージが届いたのは、夕方だった。
これから先方の社長と、未来たちと同じ施設内のレストランで食事をすること、その後に宮下と約束をしたとあって、未来は驚いた。
それから明日は、話したいことがあるから夜は空けておいてほしい、ということだった。
ベッドに入り、綾香から聞いた、明穂のブログを、駄目だと思いつつも恐々と覗き込むような気持ちで、見に行く。
「更新されてる…。」
日付を確かめると、今日だった。
『彼からの連絡待ち〜。
明日は、今日と全く違う
世界になっているはずっ。』
訳が分からず、心臓は波打つ。
連絡待ち、とはどういうことだろうか?
そもそも『待つ』と言うことは、待てる状況ということだろうか。
未来の中で、ずっと抑え込んでいる不安が込み上げてくる。
明穂の勘違いではなかったら?
仕事を理由に会わないような女に、青島が愛想を尽かしていたら?
未来が、青島の気持ちを信じられずにいたのは、最初の頃だけで、今は全く疑う余地などなかった。
青島のやりようと言ったら、『溺愛』ってこんな感じなのかなと、未来がぼんやり思ってしまうほどだった。
ただ未来が同じように、青島に対して気持ちを伝えられているかと問われれば、自信を持って違うと言える。
好きと一言伝えれば、キスひとつで数え切れないほどの思いを返してくる。
見つめられて、求められて、包まれることの幸せに甘え過ぎているのかもしれない。
未来は携帯を枕元に置き、天井を見つめた。
明日、午後から予定されていた会議は、午前中からになった。
ちゃんと眠らなきゃ、明日はいよいよ完成に向けて大切な1日になる。
それに明日になれば、青島に会える。
青島も話があるようだが、自分も自分で伝えなければならないことがある。
何も考えないように、未来は自分の呼吸の音だけをひたすらに聞くようして、ギュッと目を閉じた。
そうしているうちに、携帯のアラームが鳴ってハッとした。
目が覚めたような感覚はあるが、果たして眠っていたのか眠れずにいたのか、その区別さえもつかない。
それでも、少し頭が痛いのは寝覚めが悪かったせいだと言い聞かせて、念のため頭痛薬を持って行こうかな、と思いながら体を起こした。
身支度を整えているうちに、幾分すっきりしたと思った未来だったが、通勤ラッシュが過ぎた電車に揺られながら目を閉じると、頭がぐるぐる回るような感覚になって、慌てて目を開けた。
オフィスに着いたら濃いめのコーヒーを飲もうと思い、駅に降り立って仰ぎ見た空には、変わった形の雲が見えて、この時期にしては冷たすぎる風が吹いていた。
放って置いても、勝手に足が連れて行ってくれる駅からの道を歩いていた未来は、突然、意識が呼び戻されたように、目を見開いた。
戻るのは午後だと聞いていた青島の背中が、オフィスのあるビルの中に入っていくのが、はっきりと見えて、鼓動が早くなるのが分かった。
「どうして彼女と…。」
打ち消した不安を確かめるように二人の後を追った未来は、エレベーターホールでその後ろ姿を目にして、足元から崩れ落ちそうになるのを、壁に付いた手で必死に支えた。
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