LaLa-bye.

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 体が、揺りかごの様に、ゆらゆらと揺らされている。  心地の良い揺れ。  眠たくなる。  うとうと。うとうと。  瞼が、重くなる。 「…………行くのかい?」  声が聞こえた。  お母さんの声だ。  お母さんの方を見る。  お母さんは、誰かに…私をゆらゆらと揺らしている誰かに、話し掛けている。 「…………行きます」  誰かは答えた。  強い意志を持つ声。  今までこの誰かの声を、沢山、沢山聞いてきた。  私が生まれた時には、もういた誰か。  ぎこちない笑みを浮かべ、私の誕生を祝福してくれた誰か。  壊してしまうって、私にずっと触らなかった誰か。  初めて私に触れて、とっても嬉しそうにしていた誰か。  あたふたしながらも、沢山沢山遊んでくれた誰か。  いつからか、柔らかい表情をする様になった誰か。  …そして今、悲しげな微笑みを浮かべ、私を揺らす誰か。 「…………どうして…」 「それが私の造られた意味ですから。  …終わらせに行きます。  …私の、この手で」 「あんたで無くても良いだろう?」 「もう、私一人しかいません。  …それに、私だから良いんです。  …全ての罪を背負うのに、私以上の適任はいません」 「あんたは昔とは違うんだよ?  もう…もうあんただけが苦しい思いをしたり、犠牲になる事なんて…」 「…確かに私は、もう昔とは違います。  …守りたい物が出来た。  …沢山、沢山出来た。  …だから私は、悲劇を止めに行くんです。  私にしか出来ない方法で、私が守りたい物を守る為に。  …これ以上、悲劇が悲劇を呼ばない様に。  …悲劇に私の守りたい物を、二度と、奪われない為に」  そう言って、私を揺らす誰かは歌う。  子守歌。  私に安寧あれと、希望あれと、  …どうか、幸せであれと願って、歌われた歌。  そうして誰かは私の額を撫で、頬に触れた。  一瞬だけ、誰かの手の平に、見えた物がある。  誰かの真っ白な肌には不釣り合いの…違和感を超え、異常さすら感じる…赤い赤い、血よりも赤い、一輪の桜の花。  誰かは名残惜しそうに、何度も何度も私の頬を撫で、その手を離し、  …一筋の涙を零しながら、微笑んで。 「…覚えていておくれ。…君は確かに、祝福を受けて生まれてきた事を。  …全ての命は確かに、幸せになる権利がある事を。  …おやすみ。  どうか君の未来が、幸に溢れた物であります様に。  …君の未来に、私が…私の様な怪物が、いません様に」  それが私の、一番古い記憶。  今ではもう、ぼんやりになってしまったけれど。  確かに…確かに残っている記憶。  手の冷たさ、硬い肌、赤い赤い一輪の桜の花、…当時の私には有り余る程の、誰かの想い。  その誰かが、私達の下に帰って来る事は、二度と無かった。
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