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真夜中の怪談
赤々とした夕陽も落ち夜が更けていく合間に起きたお話でございます……
稲も順調に育ち笑顔に満ち溢れた優しい妻。そしてまさしく目に入れても痛くないと申しますか。それはそれは可愛い4歳の娘もおり、これ以上の幸せはない。そんな毎日を過ごしておりました。
明日も皆無事に過ごせるよう祈った後に娘がいいました……
「ととさま! ととさまに見せたい物があるの」
不思議に思いながらも可愛い娘のこと。聞いてみることにしました。
「それは嬉しいね。見せたい物とは何だい? 」
わたしの手ぬぐいの下から何やら大事そうに抱えてきました。慎重に1歩1歩。いつのまにか成長したその足取りをみると嬉しくて…… この感情をなんとよぶのでしょうか。
「ととさまに見せたかったの! 見て可愛いくて立派でしょう」
その小さな手はゆっくりと開かれてゆきました。
小さな指の隙間から覗き見ると……? 微かに音が? 娘をみると、それはそれは嬉しそうに私を見ています。そうか、そんなにも私に見せたいのだね。
もっと近づけてみせておくれ。そう言い放った瞬間!
私の顔に何やら張り付いてきた!
「ぎやああああああああああああ」
腰を抜かし這って戸口まで行きました。
我に返り…… 娘を見ると泣いていました。 可愛い娘になんと酷い事をしてしまったのか……。慌てて詫びに行くと娘の顔に張り付いていたのは
蝉・セミ・蝉ーー!!!!
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