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「なになに? マラソン大会出るの?」
遅れて駆くんが話に加わる。
「うん、今練習を――」
「スミー! 奇跡的に俺勝ったよ! 早くこっち来て」
どうやら対戦の決着が付いていたらしい。理久矢くんが会話を遮り「おいでおいで」と僕を促す。
「もう、俺がカケちゃんに勝ったとこ、ちゃんと見てなかったでしょ? しかもオミと、なんかえっちなことしてたし……」
「え!」
えっちなことって……、馴染みのない単語に恥ずかしさを覚える。
「今度は俺とするんだよ、えっちなこと」
こんな艶かしい声、僕は聞いたことがない。
すると理久矢くんは僕の腕を引っ張り、自分の膝の上に乗せる。座ったまま向かい合って抱っこされているみたいだ。
カンストした顔面偏差値の眼が、僕を覗き込むように捉える。
どうやら僕は理久矢くんの顔に弱いらしい。
駆くんも白石くんも当然のようにかっこいいが、理久矢くんにはどこかミステリアスで艶っぽい雰囲気がある。
仲良くなってから彼の作った歌をいくつか聞いたことがあるが、高校生ながら人生を達観したような詩が印象的だった。
そういう常人にはない浮世離れした感覚が、外見にも溢れているのだろうか。
そんな考察をしたところで、この状況に冷静さを保てるわけはなく、ドキドキと心臓が脈を打ち続けている。
「はいはい、そこイチャつかない。始めちゃうよー」
またもや駆くんがこの場を仕切りゲームを再開させる。
しかしこの後もずっと緊張しっぱなしで全くゲームに集中できず、全てのステージで悲惨なゲームオーバーを迎えたのは言うまでもないだろう。
[EP2 終わり]
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