2 スミ取りゲーム

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「なになに? マラソン大会出るの?」  遅れて駆くんが話に加わる。 「うん、今練習を――」 「スミー! 奇跡的に俺勝ったよ! 早くこっち来て」  どうやら対戦の決着が付いていたらしい。理久矢くんが会話を遮り「おいでおいで」と僕を促す。 「もう、俺がカケちゃんに勝ったとこ、ちゃんと見てなかったでしょ? しかもオミと、なんかえっちなことしてたし……」 「え!」  えっちなことって……、馴染みのない単語に恥ずかしさを覚える。 「今度は俺とするんだよ、えっちなこと」  こんな艶かしい声、僕は聞いたことがない。  すると理久矢くんは僕の腕を引っ張り、自分の膝の上に乗せる。座ったまま向かい合って抱っこされているみたいだ。  カンストした顔面偏差値の眼が、僕を覗き込むように捉える。  どうやら僕は理久矢くんの顔に弱いらしい。    駆くんも白石くんも当然のようにかっこいいが、理久矢くんにはどこかミステリアスで艶っぽい雰囲気がある。  仲良くなってから彼の作った歌をいくつか聞いたことがあるが、高校生ながら人生を達観したような詩が印象的だった。  そういう常人にはない浮世離れした感覚が、外見にも溢れているのだろうか。  そんな考察をしたところで、この状況に冷静さを保てるわけはなく、ドキドキと心臓が脈を打ち続けている。 「はいはい、そこイチャつかない。始めちゃうよー」  またもや駆くんがこの場を仕切りゲームを再開させる。  しかしこの後もずっと緊張しっぱなしで全くゲームに集中できず、全てのステージで悲惨なゲームオーバーを迎えたのは言うまでもないだろう。 [EP2 終わり]
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