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「おい駆、困らせてんじゃねえか」
「え!? 俺困らせるようなこと言った?」
「カケちゃんはいつも馴れ馴れしいんだよ」
清水くんに他の二人が悪態をつくが、三人ともとても楽しそうに笑っている。仲が良いんだな……。
「ねぇ、スミくんこれからお昼食べるでしょ? 俺らと一緒に食べようよ。俺ずっとスミくんと話してみたかったんだよね。あ、俺、駆っていうんだけど、よろしくね」
清水駆――名乗られずとも、もちろん名前は知っていた。
ただでさえキラキラした人しかいないバスケ部員の中でも、気さくで人気者で輪の中心にいるような人物だ。
その彼が、僕なんかにお昼を一緒に食べようと誘っているのだ。
「えっ、あ、うん」
理解が追いつかず、すっとんきょうな返事をしてしまう。
「やった!」
清水くんは僕のために近くの席から椅子を調達し、他の二人は机の上にお弁当を置くためのスペースを空けてくれる。
「あ、ありがとう」
急なことに驚いたが、純粋に嬉しかった。誰かとご飯を一緒に食べるのは久しぶりだったし、友達を作ることはほとんど諦めていたから。
いや、でも一度ご飯を一緒に食べたからって友達なんて図々しいかな。そんなことを考えていると、向かいの椅子に座る清水くんとバチッと目が合った。
垂れ目をニコニコとさせている彼がさらにニカっと笑う。
突然の不意打ちに心臓が強くドキっと拍動したのがわかった。
「ね、スミって呼んでいい?」
お弁当を食べ始めると、右側から声がかかった。顔を向けると、水戸理久矢がこちらを見ていた。
「俺のことは理久矢でいいからさ」
もちろん彼も学内の有名人。中性的な顔立ちで、特に長いまつ毛と吸い込まれるような目には釘付けになってしまう。
泣きぼくろも似合っていてセクシーだなぁ。
「……スミ? 俺の顔になんか付いてる?」
思わず見惚れてしまった。堂々と彼の顔を拝める機会なんてないので、チャンスだとばかりに。
不審に思っている彼にどう誤魔化そうかと悩んでいると、不意にも清水くんが助け舟を出す。
「理久矢の顔、寝てた跡ついてんだよ」
「げっ。まじ?」
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