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2 スミ取りゲーム
初めてあの三人とお昼を食べてから、昼休みも教室移動も、基本的に一緒に行動することが当たり前となった。
放課後や休日に関しては、僕以外はみんなそれぞれ部活やバンド練習で忙しいのだが、空いた日はほとんどを一緒に過ごしていた。
とある休日の昼下がり。
いつものようにみんなで理久矢くんの家に集まっていた。
「あークッソ! 負けたー!」
「よっし勝った! はい駆終わりな。スミ、こっちおいで」
「オミもカケちゃんもずるい、俺このゲーム苦手なのに」
そして現在何をしているかというと、人気の格闘ゲームだ。
僕も入れて四人で一緒に遊んでいる。普通の遊び方だ。
しかし、おかしい。
三人がけのソファで左から、清水くん、白石くん、理久矢くんが並んで座っているのだが、僕は座る場所なんて床で構わないのに。
なぜかゲームで一位を取った人の股の間に僕が座る、という謎のルールで彼らは遊んでいる。
僕が一位を取らない前提なのが少し腑に落ちないが、抗議できる実力はないのでそれは一旦置いておく。
たった今、白石くんが清水くんから一位を勝ち取ったため、僕は右隣に移動するべく立ち上がった。
清水くんが名残惜しそうな顔で「スミくーん」と嘆いている。
「清水くん、さっき惜しかったね。僕だったらあの技、秒でやられてたよ」
「あー、また清水って呼んだ。かける、な?」
「そうだ、ごめん駆くん」
「許さないよ」
不貞腐れてしまったが、この顔も見慣れてしまい今では駆くんらしくて好きだなと、密かに思っていることは本人には内緒である。
「駆、いい加減手を離せ」
白石くんが平坦なトーンで遮る。
駆くんが「冗談だよ」とパッと明るい笑顔になり、ずっと握っていた僕の手を離す。
そして白石くんがここに座れというジェスチャーで股の間の空間をポンポンと叩いた。
座った瞬間、寄りかかるように後ろから白石くんに抱きしめられる。
「あーこれ最高だな」
白石くんの両膝に挟まれ、さらに上半身もホールドされたことで密着度が急に上がる。
ち、近い――
さっきまで駆くんとも同様に密着していたが、彼は普段からスキンシップが激しいためあまり気にならなかった。
だけど白石くんが僕に触れてくることは滅多にない。ものすごく緊張するし、そわそわしてしまい落ち着かない。
かといって嫌な感じは全くしないのだけど。
すると右隣の理久矢くんが白石くんの肩に寄りかかる。必然的に理久矢くんとも距離が近くなった。
「あ、ホクロはっけーん」
理久矢くんが声を発すると同時に、首筋にひんやりとした感触が伝わる。
「ひゃあっ!」
びっくりして変な声が出てしまった。おそらく理久矢くんの仕業だろう。それにしてもなぜ彼はこんなに手が冷たいのか。
理久矢くんは「ごめんごめん」とへらへらとした顔で笑っている。
「スミ、ここ弱いの? 耳も赤い」
白石くんがまだ冷たい感触の残る首筋に優しく触れながら、耳元でそう囁いてきた。
いや、なになになに!
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