美玲ちゃんの想い

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私は都内の美大に通う大学3年生で、 将来は絵本作家とアートセラピストになるべく、 日々勉強している。 …とは言っても、いきなり絵本作家や アートセラピストになれるとはさすがに思っては いなくて、とりあえずは児童書の出版社への就職を 考えたりもしている。 絵を描くことは子供の頃から本当に好きで、 大人になってもその思いは変わることはなく、 その道にこのまま進めたら…と自然に思うように なっていった。 両親もおまえの好きなことに進みなさい、 と応援してくれてるし、自分はきっと幸せな環境に いるに違いないと思う。 そんな、絵のことしか考えてない頭でっかちな 私に…ある日、まったく違う世界から 現れた人がいた。 そして、その人はなんと私に 愛の告白をしてくれたのだ。 その人…ユウさんは、私から見れば 正に異次元の人のようで、 告白は受け入れることは出来なかったけれど、 私は不思議なくらい嫌ではなかった。 むしろ、女性でありながら、男性の心情を持ち、 なのに乱暴な感じではなく、むしろ透明感のある 美しいユウさんに人として強く惹かれた。 「それって、好きだってことじゃないの?」 ユカリセンパイには笑われたけど、 この惹かれた…は異性を好き、な感情とは あきらかに違う。 かと言って、同性に抱く友情の感情ではない。 私はユウさんの人としての儚い美しさに とても惹かれたのだ。 その感情の赴くまま、シエスタに通うようになり、 ユウさんの人柄にも触れるようになって、 人として好きになっていった。 (これはユウさんには言っていない。なんだか 誤解されてしまいそうだし…) ユウさんが、あの柔らかなトーンで 「いらっしゃい、美玲ちゃん」 と言ってくれるだけで 心がとても穏やかになっていくのを感じる。 こうしてカウンターに座り、少し会話したり、 ユウさんがシェイカーを振る姿を眺めていたり、 他のお客さんと楽しそうに話しているのを見るだけで 私は満たされた気持ちになった。 これからもこうしていけたら…と密かに思っている。 「ユウくんの愛を受け入れちゃえば? 両想いじゃないの、あんたたち」 たきちゃんさんにもそう言われたけど、 私にとってユウさんはシエスタも含めての ユウさんなのだと思う。 この場所抜きにユウさんのことは考えられない。 「とうとうシエスタの一部になってしまうのか、 ユウくん…」 大げさに頭を抱える大下さんに 思わずユウさんと苦笑してしまった。 単純に…シエスタとユウさんが同じくらい 大好きじゃダメなんだろうか…? シエスタでシェイカーを振るユウさんの絵を 密かに描いていた私は、 思い切ってユウさんにそれをプレゼントした。 「ありがとう、美玲ちゃん…嬉しいよ」 そう言ってくれたことも嬉しかったが、 何よりユウさんがその絵をシエスタの壁に 飾ってくれたことが本当に嬉しかった。 ここにあなたが居てくれるから… 私の絵も一緒に居させて下さい…。
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