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おやすみ、おはよう。
ひとつのベッドにふたりで寝転ぶ。
男ふたりじゃ、ちょっと狭いね。
エアコンが利いて涼しい室内。
僕らは枕を並べて、そっと照明を落とした。
「おやすみ」
「おやすみ」
窓の外から聞こえる蝉の鳴き声。
どこか遠くの家で鳴っている風鈴の音。
うるさいわけじゃないけれど、少しだけ気になって眠れない。
僕は、隣の彼に小さな声で訊ねた。
「寝た?」
「寝た」
「ふふ。そっかぁ」
つんつんと彼の肩を指でつつくと、彼は左目だけを開いて僕に言う。
「明日、早いから寝るぞ」
「うん。けど、ちょっと構ってほしい気分」
「子供か」
「同い年」
「早く寝ないとお肌に悪いぞー」
「気にしないもん、そんなこと」
ぎゅっ。
彼は僕を包むように抱きしめる。
僕を寝かしつけるように、ゆっくりと頭を撫でて囁く。
「おやすみ。いちゃつくのはまた明日」
「別に、いちゃいちゃしたいわけじゃないのに」
「俺がしたいの」
「ふふ。そっかぁ」
彼の心臓の音を聞いていたら、だんだん眠くなってきた。
同時に聞こえる彼の寝息。
すうすう。
ああ、落ち着くなぁ。
「おやすみ……」
僕は目を閉じて彼の鼓動に息を合わせる。
おやすみ、おはよう、そして、おやすみ。
毎日それが言える幸せに、感謝を。
夢の中でも彼に会いたいな。
遠くなる意識の中で、そんなことを僕は思った。
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