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罪
人類は滅亡する。あと十数年と言ったところだろうか。
──何故滅亡するのかって?
答えは簡単。人類は子孫を遺すことをやめたのだよ。
生まれてからの苦難はあなた達の知るところではない。よって人類は、我が子に苦難を背負わせたくない一心で子孫繁栄をやめたのだ。
種族維持本能を打ち負かす理性で、理性で本能を押し潰して、人類は生まれぬ我が子のために我が子を作らない判断をした。
人類は残り数万人。その全てが80歳以上の老人である。
若者はおらず、ただ死を待つのみとなった者がほとんどだ。
時は人類がただただ滅びゆくために進んでいる。ゆっくり、ゆっくりと。
と思ったのだが、山奥の小屋に1組の夫婦があった。まだ若い。30代そこそこであろう。存在を知られぬ者たちだ。あろう事か、女は赤ん坊を抱いている。
当人達はアダムとイブにでもなったつもりだろうか。これはまさしく、これまでの人類の苦労を踏み躙る悪行だ。なんと利己的で醜いのだ。なんとも愚かしいと思うね。無駄な抵抗だ。
これは神たる私が仕向けた『リセット』を阻む蛮行。天罰が下っても致し方あるまい。
今宵、小屋に雷を落とそう。天罰が下るのだ。
雷が落ち、小屋は燃え、若夫婦は焼け死んだ。しかし、小屋の外に投げ出された赤ん坊は生きている。雷を受けたのに、何故。
この時、私はようやく悟ったよ。この赤ん坊こそ、次代の神なのだと。私も御役御免なのだと。
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