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「何回やるのよ」
私の部屋で母が悲鳴をあげる所からここまでの流れを、もう数十回は繰り返している。
役者の両親が病院で泣いたのは、多くの人から同情が欲しいからだと知ったのは、二回目だ。
それに、私をいじめたあいつらは、私が死んでも別の誰かを見つけて、その子をいじめていた。所詮、そんな奴らなのだ。ちなみに、それが分かったのは十回目くらいの時だ。
それらが分かったら、他はどうでもよかった。
これ以上、私が知らなければならない事なんてないだろう。もう飽き飽きだ。そう思った私は、私の部屋に戻ったと同時に怒鳴った。
するとどこから現れたのか、背の高い鬼が笑って言った。
「永遠に、だ」
「はぁ? 何でよ。売れない役者の安い演技を、永遠に聞くなんて死ぬより嫌だって言ってるの」
私がそう言うと、鬼は腹を抱えて笑い、応えた。
「安心しろ。こっから先は、死ぬより嫌な事しか起きねぇよ」
鬼は、私の部屋を徘徊しながら付け足した。
「これが無間地獄だ。仏教の教えに背いた奴がおちる事で有名な、な?」
「はぁ? 仏教なんて関係ないでしょ?」
「自殺が悪いとは言わねぇよ。けど、やりたいことをやりきってからするか、誰かのためにするか、何かの目的のために命を賭けてする自殺以外のそれは、全部こっちだ」
「はぁ? 私は、あいつらに分からせるために自殺したのよ。目的のためにってやつじや……」
鬼は、私の遺書の横にあった私の日記を持ち、それをひらひらさせながら言った。
「逃げる手段で自殺した奴が、偉そうなことぬかすなってことだ」
ケケケッ。と鬼は消えた。
死んだらゆっくり休める。そう思ったのに、こんな苦しい目に遭わなきゃいけないなら、死ぬんじゃなかった。
私の後悔をよそに、私の身体は勝手に動き、ドアノブにくくりつけたロープの先の輪に、私の頭を入れた。
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