Scene02 無理心中と幼い子ども

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隼人が目を覚ます。 身体中が痛い。 見えるのは視界の狭い白い天井。 そして、聞こえる親戚の人たちの声。 「なんだってこんなことを……」 「それよりどうするんだ?  この先、誰があの子を引き取る?」 「幸い借金をする前に逝ってくれたけど……  ウチは無理よ?受験を控えている子どもが3人もいるのに……」 「ウチだって無理さ……  狭いアパート暮らしだからな」 今まで、優しかった親戚たち。 それが、今。 自分を誰が引き取ろうかということで揉めている。 嫌われ者の隼人。 表情が薄い彼は、親戚から好かれてはいなかった。 親戚の子どもたちからも、嫌われ者の隼人と言われていた。 表情が薄いから何を考えているかわからない。 それでも両親は、自分を愛していてくれたし妹のマコは、隼人の気持ちを代弁してくれていた。 それを失った。 「あ、マコはどうなったんだろう?」 隼人が小さな声で呟く。 「でも、マコちゃんまで巻き込んで……  見たでしょ?あの遺体……  黒焦げだったじゃないの……  しかも、喉をおさえていたから焼き死ぬ寸前まで生きていたらしいわよ?」 それを聞いた隼人の鼓動が早くなる。   マコが死んだ?   マコが黒焦げ? 隼人が叫ぼうとしたとき、自分のベッドの中で何かが動く。 「え?」 隼人は、ゆっくりと視線を下に向けると見知らぬ女の子が静かに現れる。 そして、その少女は隼人に尋ねる。 「泣くの?」 「え?誰?」 「愛」 「愛……さん?」 「うん。  ねぇ、泣くの?」 愛が、そう言って隼人の目を見る。 「だって……」 「嫌な言葉が聞こえてくるから?」 「うん」 隼人はうなずいた。 「……じゃ、こうする」 愛は、隼人の耳を押さえた。 「え?」 「こうすれば聞こえない?」 「え?」 「うん。  聞こえない」 言葉足らずの、呂律の周らない言葉で愛はそう言った。 隼人は、静かに涙を零す。 「あー」 愛は戸惑う。 そして、思い出す。 「ぎゅー」 愛は隼人の体を抱きしめた。 初めて両親以外に抱きしめられた。 隼人にとっては、そんな嬉しい瞬間のはずなのに悲しい。 そして、その悔しさに涙した。
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