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Scene01 ニートですがなにか?
一度途絶えるとなかなか復帰は難しい。
履歴書一枚でポイっと捨てられる。
仕事を辞めた理由?
そんなのマイナスな表現を使わずに説明なんてできる人は少ないだろう。
久留里 大輔は、そう思ってため息をつく。
今年で、25歳。
IT関係の専門学校を卒業したものの。
なかなか大輔に合う仕事がなかったのか。
不採用が続き。
やっと決まった職場でも、イジメやパワハラが続き辞めるしか選択肢がなかった。
大輔は、就職活動をしているためニートには分類されないかもしれない。
しかし、不採用通知が3000件を超えたときにひきこもりのニートになる。
ああ、自分はいらない人間なんだ。
必要ないんだ。
そう思った。
そんなときだった。
テレビのテロップでニート撲滅委員会を結束。
そして、全てのニートに適材適所な仕事を与える。
「はは。ニートに人権はないってことか」
大輔はまだ知らなかった。
この『適材適所な仕事』の意味を。
大輔は、どうでもよかった。
「でも、死ぬよりマシだよね」
大輔は、そっと窓に目を向ける。
星空が綺麗だった。
ただそれだけ。
ただそれだけだった。
親に迷惑をかけたくない。
そんな気持ちがある。
どのニートもみんなそうだ。
死にたいわけじゃない生きたくないんだ。
無職の人が事件を起こすたびに。
――やっぱりニートって屑だな。
ってネットに書き込みイイネをもらいたがるイイネ星人がこの星には多い。
そのたびにニートが傷つくことをイイネ星人は知らない。
気づいてその行為をやっているのなら……
心の傷害罪だろう。
自分ができないことに挑戦する勇気もなく。
自分を変えてく勇気もなく、でも他人の足をひっぱるのには夢中。
「出来ない人間が出来る人間の足を引っ張るのは間違っている」
そういった国会議員がいる。
でも、大輔は思った。
本当に出来る人間ってなんだろう?
足を引っ張られた程度のことで崩れる人間は本当に出来る人間なのだろうか?
自分は、出来ない側の人間。
というか、なんでも出来る人間はいない。
何も出ないからはじまる人間がほとんど。
でも、社会に出れば即戦力を求められる。
その上、その社会は「つらかったら逃げてもいいんだよ?」と謎の暗示をかける。
一度逃げてしまったことで自分はどうなった?
大輔の身体に激痛が走る。
鉄のハンマーで殴られたような骨が砕けるような痛みだ。
そう社会は逃げてしまった人に甘くはない。
社会に出ると逃げたら逃げた理由を聞いてくる。
そして、それを弱さと叩いてくる。
そう、世界は誰にも優しくはない。
選ばれたほんの一握りの人間だけ……
その一握りの人間だけなにをしても許される。
この委員会も無責任な大人たちも。
その場の人気稼ぎで言っているんだろう。
だから大輔はなにか無性に悲しくなった。
自分の身体を走る激痛。
そして体中にあるシミ……
だからイジメられた。
幼稚園、小学校、中学校、高校、専門学校。
そして会社と社会。
色んな人がいる?
それも個性?
でも、わかってほしい。
その言葉にも傷つくんだってことを。
でも、誰にも言えない。
大輔はそんな男だ。
そんな大輔のもとにニート撲滅委員会から書類が届いたのはその数日後だった。
ニート更生委員会という場所から『ひらかた警察署特殊班秘密課勤務』に勤務を命じられることになる。
資格も経験もいらない。
つまり使い捨て……
大輔はすぐにそう思った。
もういいや。
どうにでもなれ。
大輔の中にいろんなもやもやがある中。
勤務日にひらかた警察署に向かった。
着慣れた少し黄ばんだスーツ。
そっと小さくなりながら職場に向かう。
ああ、きっとここでもイジメられるな。
そう思った。
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