きみは笑っていた

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☆ それから数年経った。 桔平の作品は、応募しても箸にも棒にもひっかからなかった。 私は普通にOLの職に就いていたから、アパートに転がり込んできた桔平の身の回りの出費の援助をしていた。 昼夜問わずずっとPCに向かい、執筆している。 明るい性格の彼から、笑顔が消えてきた。 「桔平、晩ご飯できたよ。食べよう?」 「……んー。いい」 私に背を向け、こちらも見ずにちいさく応える彼。 「最近食べないね。ダメだよ。何事も身体が資本」 「入らない……」 力なく応える桔平。 「最近睡眠もロクにとってないよね。ずっとPCに向かいっぱなしで」 「眠れない……」 「病院行って、眠剤処方してもらったら?」 私は、はーっと息を吐くと、彼の背中に手を添えた。 「痩せたね……」 「ちょっと邪魔しないで」 カタカタとキーボードを打つ手を止めずに、冷たく呟く。
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