2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
☆
私はそんな彼を見かねて、つい言ってしまった。
「桔平。もう小説家になる夢は諦めよう? 就職しようよ。小説なんて趣味の範疇で書けばいいじゃない」
最近魂が抜けたかのように、反応の鈍い桔平だったのに、私の言葉にキーボードを叩く手を止め、じろり、と振り返った。
「……何だって?」
目が血走っている。顔色が悪い。
「いつまでこんな生活続けるつもり? 心身ボロボロで。不健康だよ」
「……文章書いてて何が悪い……?」
「だって、あなた一般的に無職だよ? 無収入だよ? 私が働かないと生活できないじゃない」
すっ、と彼が立ち上がった。
ごつっ……!
気がつくと私は殴られていて、部屋の隅にすっとんだ。
「あ……悪い……」
「桔平なんて……もう知らない! 野垂れ死んじゃえ!」
私は家を飛び出した。
その日は帰ることなく、友人の家へ泊めてもらった。
最初のコメントを投稿しよう!