きみは笑っていた

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☆ 私はそんな彼を見かねて、つい言ってしまった。 「桔平。もう小説家になる夢は諦めよう? 就職しようよ。小説なんて趣味の範疇で書けばいいじゃない」 最近魂が抜けたかのように、反応の鈍い桔平だったのに、私の言葉にキーボードを叩く手を止め、じろり、と振り返った。 「……何だって?」 目が血走っている。顔色が悪い。 「いつまでこんな生活続けるつもり? 心身ボロボロで。不健康だよ」 「……文章書いてて何が悪い……?」 「だって、あなた一般的に無職だよ? 無収入だよ? 私が働かないと生活できないじゃない」 すっ、と彼が立ち上がった。 ごつっ……! 気がつくと私は殴られていて、部屋の隅にすっとんだ。 「あ……悪い……」 「桔平なんて……もう知らない! 野垂れ死んじゃえ!」 私は家を飛び出した。 その日は帰ることなく、友人の家へ泊めてもらった。
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