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6年間のデータは全て新しいスマホに移行されている。つまり今の2つのスマホは、外見は全く違うがほぼ同じ中身になっていた。
しかし古い相棒のほうには、今日のミホとの思い出はない。もちろんこれから先も、このスマホには何も残らない。バッテリーが壊れているので、電池がなくなればついに、この子はもう完全に抜け殻になる。
そして新しいスマホもいつの日か、抜け殻になるときがくる。
私は古いほうのスマホを、契約書と一緒に紙袋に入れてクローゼットの奥へとしまった。しばらく開けないだろうから、その上に空き箱や他の書類をのせる。
すっかり物置で眠っているものたちの、その一部になった私のスマホ。今朝までは肌身離さず持っていたのに、変な感じだ。
私はこの古い相棒に「さようなら」とは言いたくなかった。だから小さく、
「おやすみなさい」
と声をかけ、クローゼットの引き戸をゆっくりと閉める。
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