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脳血栓
あれから半年がたったある日の夕刻、それは朝田部長のオフィスでのことである。
「三浦君、淳君のことだけど検査の病院変えてみたの、あれは正解だったよね、ウイルス性脳血栓が原因だって、手術に5時間も掛かっただけあってすっかり記憶戻ったりなんかしちゃってさ、でもどうしてだろうね、高橋専務なんかワクチン接種したって言うのにちっとも改善しないんだよ」
「えっ、そんな出来事有りましたの?」
「君、またしても淳君から聴いてないの?ホント?・・何も?・・」
「えぇ、何も・・」
「じゃ、これから話すけど、この前みたいに意識を失わないって約束してくれる?」
「アッ、ハイ、大丈夫です約束します」
「この間だって僕と高橋専務、それと淳君と三人で飯食いに行った時だけどね・・この夜の食事代は高橋が奢るって順番なのに、『淳君の番』だって高橋の奴、言い張って訊かないんだよ」
「それで?・・それで誰が支払ったんですか?・・」
「淳君って優しいだろう、だから文句ひとつ言わずあいつ・・いや淳君が払ってくれたんだよ」
「えぇ~部長⁉・・私し気絶しそうです・・」
「だから、約束しただろ・・頼むよ三浦君」
そうなんです。もう三浦は戸籍上、蒲池淳の配偶者に戻っていたのでした。
―完―
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