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「お母さん、それで淳は今何処にいるんですか?まさか病院で入院だなんて・・そんなこと無いですよね⁉」
「あぁ、いま父さんと漁に出ているよ、あすの朝には港に戻って来るさ、それまで内でゆっくり休んでいきなさい」
淳の父親の実は根っからの漁師である。とは言っても今は自分の船を持たない、津波で船を流されてからは組合からの借り舟で漁をしている。それ故、決して裕福な生活とは言えないのである。
「有難うございますお母さん、淳の部屋ってまだインターネット出来るんですの?」
淳と三浦は海外ツアーで二人だけの結婚式を上げてはいるが、三浦はその結婚前に一度この実家を訪れたことがある。
「あぁ、そう言えばこの間ここの食卓で父さんとノートパソコンを使って何やら検索していたようだけど‥今は家中、どこでも何とか言うの出来るんだって」
「へぇ~まだパソコン使えるんだ・・」
「そりゃそうだよ、昔のじゃなくって淳が持って帰ってきた薄っぺらい奴だよ」
「お母さん違うんです・・私の言ってるのはパソコンのことでは無く、淳が『キーボードを打てる』ってことに少し安心してしまったんです」
「パソコンは昔から使ってたよ、今では病院の仕事だってそれでなきゃ務まらないみたいだね」
そう言いながら、裕子は流し台で皮を剥いたリンゴをお盆にのせ食卓に座る三浦の前に置いた。
「さぁ食べなさい・・風美さんあんた会社勤めしてんだろ?」
「えぇ、でも3日間のお休み頂いてきました・・お母さん、これ頂いたら淳のお部屋に入らせてもらってもイイ? 少し調べ物をしたいんです」
「どうぞ、3日でも1週間でも・・好きなだけ居なさい、昔は淳のラグビー部の仲間さん2,3人は毎日のように泊っていたもんだよ、まるで合宿所みたいだったんだよ」
そうだった、淳が大学時代ラグビーをやっていたのを三浦は交際中から訊かされていた。
だが実家に来てまで三浦は何を調べたいのだろうか、やり残している自分の仕事だろうか、それとも何か思いついたのだろうか・・
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