共通はラグビー

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 そこで三浦の取った行動は、まずは淳の所在とその健在ぶりを確認することだった。 だからとりあえずは淳の実家にたどりついたと言うことである。  三浦は、淳の部屋に入ると淳のパソコンを起動させていた。 jk○○・・〇パスワードは以前とは変わっていなかった。 「えーと、『感染症病院』でまずは検索だ」 「次は、『脳神経内科』で検索だ」 「次は『アルツハイマー』で検索・・いや認知症かな?」  三浦がネット情報で学んだ結果は『物忘れ』=『認知症』といった単純な紐づけは出来ないという事だった。つまり、脳内の硬膜下血腫などの血流障害でも同様の症状が現れることを学んだのである。 「あっ、朝田部長ですか?」 「えっ、君⁉三浦君じゃないか・・もう退院したと聞いたが、三日も休みとって、何処にいるんだい、もう体は大丈夫なのか? 君じゃなきゃ困るんだよ他の秘書では・・」 「部長、ご心配頂いて有難うございます。今日は私から少し頼みたいことが有るんですが?」 「その頼みを訊けば早く帰って来てくれるんなら・・良いよ協力するよ!」 「あの、部長も私の知人の蒲池淳はご存知ですよね」 「あぁ、君の元旦那だろ、見つかったの⁉ 行方不明だって訊いてたけど」 (えっ、部長、どうして元旦那って知ったんだろう?まぁそんなことどうでもいいか)  三浦は淳のパソコンからネットの検索機能で幾つかの専門病院をリストアップしていた。秘書をしている中で得意先には著名な病院が数多く存在していることも承知の上である。でも秘書の分際でそれらの病院に三浦一人がかけ合うなど到底無理、むしろ電話にも出て貰えないだろう。一部上場会社の役員秘書である三浦はさすがに賢い判断をしていた。  そこで思いついたのが、朝田部長の政治力にお手伝い頂こうと言う魂胆だ。 朝田は過去、蒲池に対する失礼をお詫びするため、僅か一度きりと言えど夕食に招待したことが有る。その際の朝田の印象も好青年だと感じていたと言うから、これまた思ったより話は早かった。 人徳と言うのだろうか、他人(ひと)が居ようが居まいが、人間、常日頃の行動は大切にしなければならない標本のような人物である。  朝田は三浦から電話を貰った後、あらゆる人脈を駆使して蒲池淳のセカンドオピニオンの予約を幾つか取り付けた。 ・・・・・・ 「朝田部長、有難うございました。何とお礼申し上げていいやら、私みたいな一秘書のために・・」 「いや、蒲池君だけの事だけじゃないんだ、ここだけの話だがね、私の親友の高橋専務を始め、ウチの社にも疑わしい奴らがちらほら居るんだよ。営業部の若いのなんかとても優秀なのに、それで退社を余儀なくされている。諦めちゃだめだ、もしそうだったとしてもこの度アメリカと共同開発した認知症を根本から治療する薬が既に治験に入っているって言うじゃないか・・一人だけで心配してちゃだめだよ」 「部長・・高橋専務のことご存知だったんですか?」 「三浦君・・君どうしてそれを?」 「いや、以前曜日のご発言で少しばかり感じるところがありまして・・」 「三浦君、それは誰にも言っちゃだめだよ、ここだけの話に留めて置くんだ、いいね!」 「ハイ、分かりました。わざわざお電話いただきまして、ホントに有難うございました」
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