堕落

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堕落

この世界の神は、永久に平和な日々が続くことが気に入らなかったらしい。 初代国王が大国から独立しこの国を建ててから三百年、代々の国王は民から慕われ嫁いできた王妃も皆から好かれていた。革命や暴動も大規模なものは起きずずっと平和だった。十四代目の王は病により若くして崩御したため十五代目の国王は二十歳で王座に着いた。これが国の崩れる予兆だったのだろう。若くしてまだ経験もない国王を操ろうとする臣下も現れてくる。王妃でさえ実権を握れるまいかと企んでいた。それでも大きな事件は起こらず二人の子が産まれた。兄と妹。兄の方は剣術に長け、成績優秀だった。国王も跡継ぎが優秀なことに喜んだ。王妃も兄____アデルを溺愛した。問題は妹の方だった。真っ白な髪、目、肌。王妃は気味悪がり近づこうとしなかった。しかし兄妹仲はとても良く、アデルを溺愛していた王妃はそれが気に入らず妹____ルナを齢八歳の時に幽閉した。国王には“行方不明”と報告された。アデルが十二歳の誕生日の時、夜、アデルは国王を訪ねた。 「あの......父上、悩み事.......相談があるのですが......」 「どうした?言ってみなさい」 普段から誰にも頼ろうとせず自分で解決するアデルに頼られるのは父親としても嬉しい。周りにいた使用人にワイングラスを下げさせる。 「それなんですが.......二人きりで話すことはできませんか?父上以外に聞かれたくないのです」 「いいだろう、お前らは一旦下がれ」 自分が特別とされているような響きに気分を良くし、快く願いを聞き入れ部屋から全員追い出す。使用人が全員外へ出て扉を閉めたことを確認し、アデルは口を開いた。 「ルナが行方不明となってもう二年も経ちます。一向に手がかりは掴めていません。それどころか捜索を二の次にしているようにも見えます。父上、本当に僕の妹は見つかりますよね?」 「そのことか........捜索は懸命にさせている。近いうち必ず生きて戻ってくるよ」 国王はルナのことはアデルさえいればどうでもいいと思っていた。そして、うすうす王妃がルナを隠していることも感づいていた。無駄な捜索よりも城の装飾に力を入れていることにアデルが気づいていることに焦る。 「そうですか........父上は、ルナが生きていることをご存知なのですね」 「........どういうことだ?」 そう国王が返したと同時に王座に赤い花が突然と咲く。 「ア......デル.......?」 王の足元には犯行に使われたナイフ。 「父上!父上!」 「どうされましたか!?」 騒ぎを聞きつけ外にいた使用人が駆けつける。国王の元へ駆け寄った使用人が見たのは正面から国王の跳ねた血を被った王子と動脈をヤられ既に息絶えた国王の無残な姿だった。
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