3 みーつけた

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3 みーつけた

「みーつけた!」 いきなり腕をつかんだその人は、金髪の髪をゆらして明るく笑った。 出会いは、いつも通りのお菓子回収。 今日は使わない机や椅子を置いておく空き教室の中。 その場所の掃除道具用のロッカーの前にあった。 (今日は、チョコのパウンドケーキか) 相変わらずどこかのアリスが食べたみたいな言葉はそえられているけれど、気にしない。 手慣れた様子で楓が拾った瞬間 「発見!  みーつけた!!」 目の前で、ロッカーがはじけ飛びそうな勢いで開いた。 「うわあ!?」 ひっくり返ってしりもちついた彼女の前に 「やっと会えた!  変わり者のお客さん!」 金髪、ピアス、ネックレス、来崩した制服と、色々存在感の強い男子生徒が現れた。 あわあわと固まる彼女の前にしゃがみこんで視線を合わせ 「なあなあ、俺のお菓子、ずっと食べてたのあんた?  毎日拾ってくれてたってことはおいしかった?  感想教えてくんない?  てか、連絡先交換しようよ。  名前は?  クラスどこ?  学年は同じだよね。  一番おいしかったお菓子ってどれ?  甘い方がいい?  苦め?  今日のはね、ちょっと焼き加減を変えててさ。  あ、こんどマドレーヌも作る予定で。  夏になったら冷たいのも作りたいよね。  そんでさ、あれ…」 マシンガントークをかます彼が恐ろしすぎて、楓は逃げ出した。 「ちょ、まってよ!」 背中から引き止める声など知る物か。 今日は旧校舎にもよらずに、まっすぐ家に逃げ帰った。 手にはしっかり、今日のお菓子をにぎって。
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