ハッピーエンドの殺し方

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 何よりも誰よりも、私こそが世界で一番醜い生物だと思う。いや、見た目の話ではない。心の話だ。  私は、自動化したレジの操作すら満足にできない他の客を見て「なんて頭が悪いのだろう」と心の中で(あざけ)るのだ。立派な頭脳を持っているわけでもないくせに。ああ、死にたい。  成人式を終えて社会に出た途端、まるで数十年来の親友かのようなツラで話しかけてくる元いじめっ子に吐き気がする。しかし、同時に不安が襲う。  もしかすると「いじめられている」と思っていたのは私だけなのではないだろうか? いや、もしかすると私の妄想だった可能性すらある。なんせ、“いじめを受けている”と認識していた期間のことを、私はどう足掻いても思い出すことができないのだ。  記憶にはひたすら空白ばかりが続き、気づけばいじめは終わっていたように思う。私の妄想だったのなら、大げさに学級会まで開かせてしまったことを詫びなければならない。本当に申し訳ない、死んで(つぐな)わなければ。
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