1671人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
「改めまして、美島百恵です」
よろしくね、と微笑む美島さんは、さっぱりとしたショートカットが似合う綺麗な人だった。
「榛名梢です、よろしくお願いします」
「梢ちゃんね、私のことは百恵でいいよ、課長以外みんな下の名前で呼ぶから」
「皆さん下の名前で呼ぶんですか?」
「呼びやすいからねー」
育成担当と言えば大袈裟だけど、この部署での仕事に慣れるまで、主に私のサポートをしてくれるのが、この百恵さんだ。
加瀬くんには、百恵さんと同期の小椋さんという男の人がサポートとしてついている。
「とりあえず営業部向けの社内セミナーの準備を手伝ってもらうわね」
「わかりました、私は何からすれば?」
「はいこれ」
そう言って百恵さんから差し出されたのは、二十枚ほどの書類を挟んだファイルだった。
「四十部ずつコピーしてファイリングお願い」
わあ、それはいきなり骨が折れる。
了解の旨を百恵さんに伝えてから、けれどこういう地道な黙々作業は割りと好きなので、落胆することなくコピーから始める。
コピー機がせっせと働いてくれている間に会議室を抑えて、資料を挟んでおくファイルも用意しなくちゃ。
なんかこんな風にしてると、新卒で入社したばかりの頃みたいで、ふいに懐かしくなった。
頭の中でこれからの手順を考えていると、ふと隣に誰かが並んだ気配に、視線を向ける。
最初のコメントを投稿しよう!