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「みんな良い人たちだね、安心した」
「俺、営業も好きだったけど人事も好きになると良いなあって今思ってる」
「加瀬くんは前向きだから大丈夫じゃない?」
「俺は結構小心なんだよこう見えて」
お酒で赤ら顔の加瀬くんが苦笑した。
加瀬くんは常にみんなの中心で、太陽のように明るく笑っている人だった。
明朗快活で人懐っこくて、楽しいことが大好きで、気付いたらみんなが彼のペースに巻き込まれてしまっていた。
加瀬くんを嫌いだと言う人を見たことがない。
彼はそんな人。
「大丈夫だよ、加瀬くんは課長が営業部から勝ち取った逸材だもの」
「それを言うなら榛名もそうだろ」
隣の加瀬くんが拳で軽く私の肩を押した。
そうだね、と軽く笑う。
「あ、週末俊平と飲むんだけど榛名もどう?」
「私はいいよ、お酒飲めないし」
「別に飲まなくたっていいじゃん、久しぶりに榛名ともゆっくり飲みたいしさ」
「…ならお言葉に甘えようかな」
下心を隠して了承した。
加瀬くんが嬉しそうにはしゃいでくれる。
俊平が一緒なのが気になるので、あとで飲みの最中に変なことを加瀬くんに吹き込まないよう釘を刺しておこう。
「加瀬くんと俊平も仲良いよね」
「アイツも俺がいなくなって寂しがってるだろうから飲んでやんなきゃ」
「そんなタマかな、あの俊平が」
「絶対いなくなって清々するとか思ってるよ」
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