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「なんでお前もいるわけ?」
週末の繁華街は盛況だった。
特に予約を取らずにいた私たちは、何軒かのお店に入店を断られ、若干居酒屋難民になりながら賑やかな通りを彷徨っていた。
「梢の顔は見飽きてんだよなあ」
「そんなに言うほど顔合わせてないでしょ!」
「梢の顔なんか学生時代に毎日飽きるほど見てるしどうせなら他の子が良かったわ」
「悪かったわね、誘われたのが私で」
「反省しろ?」
腹立つ男め!と心の中で憤慨した。
しかしせっかく誘ってくれた加瀬くんの手前雰囲気を壊すのも気が引けて、表面上は静かに睨むだけに留めた。
「まじで霧島帰ってくんの嫌だわー」
「…酷い同期だな」
「だって課は違うけど同じ営業フロアだぜ?勘弁してくれよ比較されんじゃん」
ようやく入れたチェーンの居酒屋で注文を終えるなり、俊平が嫌そうに項垂れて、早速煙草に火を点けた。
その隣に座っている加瀬くんは困ったように眉を垂らして笑いながら、おしぼりで手を拭いている。
「それでなくてもこっちは海外事業部に売上で押されてて肩身狭いってのに」
「その構図は相変わらずなわけか」
「この高齢化社会に国内シェア伸ばせってのがそもそも無理あるぜ、海外製の廉価な類似品も増えてんのに」
「俊平は今年ぐらいそろそろ海外事業に異動からのいきなり赴任もあるかと思ったけどな」
「俺とお前一遍にマーケ離れんのは無理だろ」
「なんかごめんな」
そこでちょうど飲み物が運ばれてきた。
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