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ビールとジンジャーエールで軽く乾杯して、話の続きが再開されるのを、私は新鮮な気持ちで聞いていた。
「俺はまじ呪ってるよ樹のこと」
「でも正直俺の方の異動は自分が一番寝耳に水だったからな、異動願い出してたわけでもないしさあ」
「まあ樹のはガチでサプライズ人事だったわ」
「内示の時点で三回は部長に本当ですか?って確認したもんな」
「で、どうなのよ人材開発は」
俊平がビールを煽りながら聞いてくるのに、私と加瀬くんは目を合わせた。
どうって言われると、そりゃあねえ。
「ぶっちゃけ俺は超楽しい」
「私もすっごい充実してる」
「お前ら敵だわ、ここの会計絶対奢れよ」
へそを曲げる俊平に笑った。
ちょうどさっき課長に企画案を提出してきたばかりの私と加瀬くんは、その解放感も手伝ってご機嫌だ。
「定着を支援してもらえるっていい時代だな」
「俊平は転職考えたことある?」
「俺は別にねえかな?今のとこ不満はあるけど不安はねえし」
「俺もないんだよなあ、榛名ってどうなの?」
「私も正直ないんだよね」
販促の仕事は好きだった。
元々地道にコツコツ調べ物をしたりって作業が苦になるタイプじゃなかったので、データ分析なんかの職務が多い販促が結構肌に合っていたんだと思う。
「梢は昔っから地味な作業は天下一品だよな」
「もう少しマシな褒め言葉なかったの?」
「でも榛名にぐちゃぐちゃのローデータ渡したら小一時間ですげえ綺麗なグラフで返ってくんだぜ、まじ魔法使い」
「樹は逆にExcelスキルなさすぎ」
「提案書作んのも苦手だったしなあ、俺」
ジョッキを傾けながら加瀬くんが笑った。
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