1670人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
確かに彼は発想力や推進力は逞しいけど、営業さんらしく事務作業は苦手そうで、よくパソコンの前で固まっている。
「俺も今後磨くから、データ分析」
「樹は絶対定量は向いてねえって、そろそろ得意分野伸ばしてく方が建設的」
「でも俺のフレームワークは半分妄想だぜ?」
「それが当たるのが恐ろしいよな」
「まあ才能ってやつかな?」
「だから長所伸ばせって言ってんだろ」
仲の良い加瀬くんと俊平を微笑ましく眺めた。
最初の配属から今までずっと同じ部署で苦楽を共にしてきた二人の結束は、やはり伊達じゃないらしい。
「あー、俺らは大丈夫だわ」
お手洗いに行ってからお店を出ると、往来の俊平と加瀬くんが女の子の二人組から声を掛けられていた。
これは逆ナンというやつ?と初めて見る光景に驚きながら、困り顔の加瀬くんとあからさまに怠そうな俊平を見比べる。
ちょっと可愛げのある純朴そうな格好良さの加瀬くんと、雑誌の表紙でも飾れそうなほど顔だけは整っている俊平。
学生くらいに見える女の子達がはしゃいでいるのを遠巻きに見ながら、考えたら私っていい立ち位置だなあと思った。
まあ一緒にお酒は飲んでくれても、それ以上は相手にしてもらえないけど。
会社の同期って、大体そんなものだ。
「あ、榛名!」
私の姿を見つけた加瀬くんが、「ごめんね」と女の子達に謝って、安心した顔でこちらに駆けてくる。
最初のコメントを投稿しよう!