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その週末は同期みんなでのBBQが催された。
一応塔子の帰国と三年ぶりの本社復帰を祝ってと言っているけど、同期で集まって飲んで騒ぐ理由が欲しかっただけだ。
「榛名、肉くれ肉!」
「こっちのエリアが焼けてる方だから」
「お前だけはマジで良い嫁になるよ、俺んとこ嫁ぎにくるか?」
「あー、まあ五年後の最終手段で」
「籍空けとくな!」
営業部の同期が、肉を頬張っていくついでにそんな軽口を叩いて笑っている。
四月の川辺はまだ涼しく過ごしやすかった。
気持ちよく青空が広がった今日はBBQ日和と呼ぶにふさわしい陽気で、同期の仲間たちみんなの表情も明るい。
「梢、焼いてばっかいないで食べなよ?」
「ちょこちょこ食べてるから平気、美琴の好きなウインナー焼けてるよ」
「食べる食べる」
美琴の紙皿にウインナーを乗せてあげる。
基本的にこういう場ではもっぱら盛り上げ役よりも裏方に徹するタイプの私は、コンロの前が定位置だ。
「これハラミ?いいよね赤身」
「ハラミはこう見えてホルモンなんですよ」
「え、そうなの?どこの部位?」
「横隔膜」
美琴とそんな話をしながら、向こうで釣りをしながらはしゃいでいるメンツの中心にいる加瀬くんを遠巻きに眺めた。
その傍らには、楽しげな塔子の姿もある。
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