SCENE:02/部外者

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夜になったら手持ち花火をするらしく、お酒を飲みつつだらだらと日暮れを待つ間に昔話で盛り上がっている。 輪の中に戻った加瀬くんは、さっきまでの悄然とした様子はどこかに捨ててきたみたいに、いつも通り楽しげだった。 「梢もたまには飲めば?」 ふいに隣に俊平が腰を降ろした。 「お酒飲むと寝ちゃうもん、迷惑でしょ」 「俺が持って帰ってやろーか」 「どうせ本当に寝たら捨ててくくせに」 「わかってんじゃん」 缶ビールはアサヒ一択!という面倒なこだわりを持つ俊平の手の中にある銀色の缶をぼんやりと見つめた。 「お前、樹となんかあった?」 「え、急になんで?」 「樹はカラ元気だし霧島はむすっとしてるし梢は端の方でぼーっとしてるし」 「…俊平ってほんと人のことよく見てるよね」 「人間観察が趣味だから」 「悪趣味だよ」 俊平の持っていた缶を取り上げて、一口飲む。 「ビールって全然美味しくない」 「舌がガキなんだろ」 「加瀬くんと塔子が喧嘩してるとこに居合わせちゃって、悪いことしたなって」 「それ梢が気に病むこと?」 「別に気に病んでるわけではないけど」 ビールをもう一口飲もうとした私の手から缶が抜き取られて、代わりに度数の低いチューハイを押し付けられた。 相変わらず気が利くな、と内心感心した。
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