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「俊平がモテるのわかるかも」
「迷惑だから惚れんなよ」
「そういう可愛げのないところがなければ加瀬くんから乗り換えてあげるんだけど」
「嬉しくねえわ」
調子乗んな、と軽く頭を小突かれる。
水面に映る夕日のオレンジが妙に綺麗だった。
「放っとけよ、樹と霧島なんて」
「私の出る幕がないのは重々承知です」
「お人好しが過ぎんだよ、お前思慮深いし打算入れる頭あるくせに絶対しねえよな」
「だってどうせ後から自己嫌悪で落ち込むのが目に見えてるもん、自分の精神衛生上よくないことはしない主義なんです」
「それ、世間一般的になんつぅか知ってる?」
「何よ?」
「偽善者」
ふん、と鼻で笑う俊平の憎たらしいこと。
慰める気があるのかないのか、学生時代から俊平は優しいのか意地が悪いのかよくわからない男だった。
日が沈むと花火が始まった。
河原では花火は禁止されていたので、キャンプ場の私有地の許容エリアに移動して持って来た花火に火を点ける。
色とりどりの火花が散っていた。
ロケット花火が夜空に向かって飛んでいく。
「さっきは変な場面見せて悪かったわね」
みんなが花火で遊ぶのを微笑ましく眺めながらベンチに座っていた私に、声を掛けてきたのは塔子だった。
普段のスーツ姿とは違うスポーティーな装いも美人がすると様になっている。
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