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SCENE:03/急降下
定着支援の企画書が通った。
私と加瀬くんが作った企画書は、比較的離職率の高い支社と部門向けにメンタルケアと新卒社員の潜在ニーズ掘り起こしをメインに据えた企画だった。
「北海道ですか?」
その施策対象となる記念すべき第一歩は、北海道支社だった。
「とりあえず遠方から攻めてもらおうかと」
「私、出張初めてです」
「販促だとそっか、加瀬くんは営業だったから出張慣れてるよね?」
「俺、マーケの頃は月の半分地方だったんで」
「なら手配の仕方とか教えてあげて」
了解です、と加瀬くんが頷く。
課長は私たちの提出した企画書をご機嫌そうにペラペラと捲っていた。
基本的にうちの販促は集客に関しての定量的なマーケティング部門としての機能を担っていたので、今まで出張はしたことがない。
逆に加瀬くんの元々いた営業部の戦略マーケティングは、現地調査と同時並行で新商品の売上管理を担う部門だ。
だからこそ基本的には現場主義で販売店や代理店を回る必要があるので、彼らは社内にいることの方が稀だった。
「なんか出張とか初めてだから緊張する…」
「別に緊張することなくね?」
「ホテルとか飛行機とか自分たちで手配するんだよね?私も手伝うよ」
「サンキュー!」
加瀬くんのパソコンを一緒に覗き込む。
慣れた様子で予算以内にホテルや航空券を押さえていく加瀬くんに感心しながら、私も次回からは役に立てるようその手配方法を頭の中に記憶した。
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