SCENE:03/急降下

5/16
前へ
/193ページ
次へ
「俺、今日すげえ仕事頑張る…」 「さすが北海道、これは反則だよね」 「何回でも来たいな北海道、俺もマーケの頃に北側担当してればこの味ともっと早く出会えたかもしんねえのに」 「加瀬くんはどこのエリア担当だったの?」 「俺は基本関西」 そんな話をしながらおいしい昼食を噛み締めた私と加瀬くんは、北海道支社に移動した。 札幌駅から程近いオフィスビルに居を構えている弊社の北海道支社を訪れるのは、私も加瀬くんももちろん初めてだ。 「わざわざ遠方までどうもご苦労様です」 「こちらこそお忙しいのにお時間確保頂いてありがとうございます」 「新卒たちへの説明は済んでますので、午後四時に大会議室に集まるよう言ってます」 「承知しました」 北海道支社の人事担当は、牟田(むた)と言う三十代前半くらいの優しげな男性だった。 全国各地に無数に散らばる営業所の内、本社以外に人事機能を持つ支社は、北海道・仙台・名古屋・大阪・広島・福岡の六支社だ。 私と加瀬くんは今後この各支社を順に回りながら、その支社が管轄する地域内で離職率の高い営業所から新卒を呼んでメンタルケアと現状のヒアリングを行う。 牟田さんから案内された大会議室に新卒たちよりも一足先に入らせてもらった私たちは、資料やプロジェクターの準備を進める。 言っても私たちの企画案はまだまだ走り出したばかりなので、今回は訪問の目的説明と潜在ニーズの深堀が主なミッションだ。
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1707人が本棚に入れています
本棚に追加