SCENE:01/第一歩

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榛名(はるな)、おはよう!」 朝の廊下で爽やかな笑顔を向けられた。 一瞬で心臓が跳ねる。 背後から軽く私の肩を叩いて現れたのは、同期の加瀬樹(かせいつき)だった。 「あっ、加瀬くん、おはよう」 「今日から配属緊張するよな、まじよろしく」 「こちらこそ、あの、不束者ですが」 「嫁入りじゃないんだから」 緊張してる? と私の顔を覗き込んでくる垂れ目気味の瞳は、どこか人懐っこくて。 私はどきどきと高鳴る心臓の鼓動が、どうか彼に聞こえませんようにと願った。 私、榛名梢と加瀬樹は、今からちょうど4年前の入社研修で初めて話す機会があった。 最初のグループワークの時、偶然同じグループになった私たちは、簡単な自己紹介カードを記入して、それを交換し合った。 元々人見知りな性格なのもあって、初対面の人ばかりのところに緊張していた私に。 当時の加瀬くんは、にこっと屈託なく優しげに笑うと、私の前に自己紹介カードをかざして。 『見て、俺ら誕生日一緒だね』 無邪気に見える八重歯と清潔な笑顔。 その一瞬で。 私はいとも簡単に、恋に落ちた。 「ようこそ我が人材開発課へ」 ――人事部・人材開発課。 私と加瀬くんが本日4月1日付で配属された部署の名前だ。 それぞれ営業部と販促部というまったく別の畑を丸々四年経験してきて、五年目になる今年の人事で、この人材開発課への配属が決まった。
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