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以来ずっと経営戦略に基づいた視座から、人材開発課は新卒・中途の正規雇用社員向けの、研修プログラムや育成プランを構成してきた。
配属先の事前情報などほとんど聞かされていなかった私と、おそらく同様の加瀬くんは、お互いに顔を見合わせて、にこりとした。
「面白そうだよな、人材開発!」
「うん、人事って聞いて、全然違う畑だったから不安だったけど、課長の話聞いてすごいわくわくした」
「しかも少数精鋭の中に若手は俺たちだけとか絶対いい経験させてもらえるぜ」
「でも、ひとりで配属じゃなくて加瀬くんが一緒で心強いよ」
「俺も俺も」
ひと通り既存のメンバーに挨拶を終えて、人材開発課の仕事に関する資料などに目を通して午前中を終えた私と加瀬くんは、昼食を摂りに社内の食堂に来ていた。
にこにこと輝く笑顔を惜しみなく向けてくる加瀬くんに、私の心臓はずっと不整脈を起こしっぱなしだ。
前髪のある髪型はすっきり清潔感があって、屋内で見ると普通に黒髪なんだけど、光に透けると少し色素が薄いんだろうことがわかる。
綺麗に並んだ歯並びの中に1本だけ尖った八重歯があって、それがどこかイタズラっ子みたいで可愛い。
特別ずば抜けてイケメンというほどでもないけど、万人受けしそうな柔らかく整ったやや童顔めの綺麗な顔立ち。
バランスのいい体つきは、そう背が高くも見えないんだけど、横に並んでみると意外と身長差があることに気づいた。
どうしよう、俊平。
覚悟してたけど、やっぱり無理かもしれない。
緊張してずっと吐きそうだよ。
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