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寝て起きたらこの都合の良い夢が覚めるんじゃないかと心配でなかなか寝付けなかった私は、翌朝まんまと寝坊した。
きゃー!と騒ぎながら焦って支度して部屋を出ると、丁度同じタイミングで隣室から出てきた美琴が宥めてくれて、ようやく落ち着いた。
「…我ながら愚かすぎて塵になりたい」
「間に合ったんだから落ち込まないの」
「はい」
朝食さえ諦めれば普通に仕事には間に合う時間だったので、駅前のコンビニで軽くおにぎりだけ買って、出社する。
人事部のオフィスに顔を出すと、まばらに出社している社員の姿があって、その中に加瀬くんもいた。
「おはよう、榛名」
「おはよう」
涼しい顔を繕って、デスクに腰掛けた。
加瀬くんは今日も爽やかにネイビーのスーツを身に纏って、格好よかった。
「そもそもの話で悪いんだけど、人材開発と人材育成の違いって分かる?」
「なんとなく、人材開発のが、広域的な意味がするような…」
「はは、まあ最初はその程度だよね」
うんうん、と満足げに福岡課長が頷く。
「本来なら、人材開発は新入社員だけでなくすべての社員に向けて行われるべきなんだ」
「社内の全社員にですか?」
「人材開発の目的は組織の強化であって、だからこそすべての社員がそれぞれに持っている特性や能力を洗い出し、そのパフォーマンスを最大限発揮させることで組織全体の底上げを図るのが本来の人材開発だ」
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