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面倒ごとに巻き込まれないよう、目線を下に向けて歩いていたつもりだが、客引きに話しかけられびくりと肩を揺らして丁寧に断った。夜の街でバイトをしている割にはこういった雰囲気はあまり好きじゃない。
「それじゃ、二軒目行く人はこちらで! 帰る方はタクシー呼んでますので!」
店の前に人がたむろしているのが見えて店の看板を見上げた。その店はこの飲み屋街の中でも高級なレストランで、よく結婚式の二次会や何かのパーティで使われることが多い。しかし今日は平日だしなと思いながらその人だかりを見ているとなにやら見たことのある顔がいくつかあり、陽也は芸能関係かと一人頷いた。この辺りではよく見かける光景だったからだ。
「はぁ、ご苦労なことで」
家にテレビはあっても好きな番組があるわけでもない。ニュースを流しながら間に挟まるCMなどで人気の俳優やアイドルを見かけるぐらいだ。あまりじろじろ見る必要もないかと陽也はその人だかりを通りすぎた。
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