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「歩夢は違うの食べたらいいのに。別に同じのじゃなくていいよ。なんならこのアイスの違うフレーバーとか」
呆れた顔してそれを選ぶくらいなら、自分の好きなものを食べたらいいと夏奈が思って言ったのに、歩夢は
「いいんだよ!」
となぜか語気が強い。
「コーラもあるし、スイカ味もあるよ。あれ見て、季節限定ウメ味だってさ」
「はいはい、邪道、邪道。ソーダしか俺の中にはないんだよ。特にこのアイスはソーダ以外にない」
じゃあなんで呆れているみたいに言うのか謎だったが、歩夢がそのままレジに向かおうとするから、慌てて夏奈は横からアイスキャンディーを二個取り上げた。
「ずっと付き合って貰ってたから今日も私が払うよ」
「おっと、気が利くじゃねーか。よし、奢らせてやろう」
歩夢は素直にアイスを渡した。
夏期講習初日から数えて五日、毎日交互にアイスを奢り合っていた。アイスを食べてから帰ると言った夏奈に歩夢が付き合ってやるとついてきたのが始まりだった。歩夢には大して意味のない行為だっただろうが、夏奈には死ぬほど嬉しかった。浮かれた気分のまま、コンビニに付き合ってくれたからと初日に奢ったら、翌日、昨日のお礼だと歩夢が奢り返してくれたのだった。
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