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「それは願掛けしてるんだから言えないってば。言ったらダメらしいよ」
「あっそ。アタリが出たら教えてくれんだろ? 気合いでアタリ出せよなー」
軽い物言いの歩夢の横顔は誰もが認めるほど整っている。長い睫毛、シャープな顎、左右対称の造り。イケメンという言葉ではちょっと足らない、いうなれば美少年だろうか。それなのにボケ担というポジション。これで雰囲気までイケメンだったら軽口なんか叩けないから、そこはアリだと思う。
「私だってアタリを出したい気持ちはあるけどね、こればっかりは運だからどうにもならないよ」
運に任せないと出来ないことがある。こうして仲良くしていることだって奇跡に近いのに、それ以上を望むのはさすがに……神様、仏様、よろずのかみさま、あらゆる神よというところだ。
「もっと気合入れて食えよ。あーあー、溶けてる、ほら!」
夏奈の食べ方にいちゃもんをつける。確かにアイスは水色の汗を垂らし始めていた。暑すぎるのだ。アイスだって堪えきれない。
「だってさ、ハズレが出たら終わっちゃうじゃん……」
きっとハズレが出るだろうし、そうしたらやっと固めた決心だって肩透かし。無駄なこととして闇に葬られる運命なのだ。
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