第6話『パートナーに花(ギフト)を』

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   そびえる志国山地の山々。    上空を飛ぶ巨大な地方機(じかたき)。その掌の上に椿姫。椿姫、ヘッドセットを外し、眼下を見つめる。    人工的に山肌を削られた山と巨大な穴(入口)が見える。ふもとから続く二本のレールが入口に繋がっている。    下降する地方機。入口には日沼佐吉(46)の姿。日沼が直立で空を見上げている。 ○同・坑道内    働く炭鉱労働者たち。ツルハシで岩を掘る者や、トロッコで石を運び出す者たちがいる。皆、声を合わせて歌っている。    炭鉱労働者たちの中で鳴子を手に踊る的井丸(36)。    その側を機関車型地方機KAG-3が通り過ぎる。KAG-3の後ろには、砕石を乗せたトロッコを牽引している。    パイプ椅子に座り、退屈そうに新聞を読む鬼頭貞雄(31)。 的井「鬼頭、一緒に踊ってはどうだ?」 鬼頭「何でこんな汗臭いところで。俺は演舞がしたいんだよ」    鬼頭の読む新聞。その一面記事には、『幕末の偉人・肖像写真発見か?』の活字。    歩いてくる椿姫の靴音。 椿姫の声「退屈そうだな? 鬼頭」    顔を上げる鬼頭。目の前に立つ椿姫と日沼。    鬼頭が立ち上がり、背中に新聞を隠す。 椿姫「掘削は順調か?」 鬼頭「はい。現在、一五万人収容可能な空間を確保。半年後には、必ず……」 椿姫「遅い! 七月だ。七月には完成させろ」 鬼頭「はっ!」 椿姫「何だ、その新聞は」    椿姫、鬼頭の持つ新聞に気付き、目を落とす。慌てる鬼頭。 鬼頭「これは、その」    椿姫、何かに気付き目を見開く。    椿姫が突然、鬼頭の胸ぐらをつかむ。 椿姫「鬼頭! その新聞を私に見せろ!」    鬼頭が、怯えながら新聞を差し出す。    ×  ×  ×    坑道に響く椿姫の笑い声。    新聞の一面を見つめる椿姫。    一面記事『幕末の偉人・肖像写真発見か?』の活字の下に古びた肖像写真。    写真には祭谷龍馬(28)にうり二つの男。着物・袴姿で腰には日本刀。右手を懐に入れている。    椿姫が日沼に新聞を差し出す。 椿姫「日沼。この男の足取りを追え」 日沼「足取り、ですか?」
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