森の魔物にご用心

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森の魔物にご用心

 あるところに、真っ白な霧に覆われた不思議な森がありました。  霧があまりにも濃いので、目の前の木が見えず、上を見上げても空が霞んでしまうほどでした。動物も鳥も虫もいない、うんと静かな森でした。聞こえてくるのは、風が木の葉の間を吹き抜けてくる音と、低い低い、何かが唸るような声だけです。  何の声でしょう。  ゆっくり足を踏み出します。さくりと木の葉を踏んだ音が、静かな森に妙に響きました。このかすかな音だけで、恐ろしい何かがこちらに気付いてしまうのではないかと考えてしまいます。  森は不思議な場所でした。その場にいる時間が長ければ長いほど、どんなに前向きで明るい人でも、様々な不安が頭をよぎってしまうのです。踏み出した先に崖があったら、迷って出られなくなってしまったら。  突然、横から恐ろしい魔物が襲い掛かって来たら、どうしよう。  さらに歩を進めたその時、ぱしんと何かが足を叩きました。  動くはずのない木の根が、まるで意志を持っているかのようにうごめいていたのです。
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