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うんと目をこらしてみると、無数の木の根が地面の上をはいずるように動き回っていました。思わず一歩下がると、下がった足にも木の根がぶつかりました。そして足元を見ると、太い木の根が目にもとまらぬ速さで両足に巻き付いていました。振り払おうにも、足が動きません。
どうしよう、と思う暇もなく、思い切り体を引っ張られました。
体が地面に叩きつけられ、ものすごい速さでどこかへと引きずられていきます。
首に提げていた木彫りのペンダントの紐がちぎれて、ペンダントは転がっていってしまいました。どうにか地面をはいずる木の根に捕まろうとしましたが、木の根は逃げるように手から離れてしまいます。
何かが唸るような声がどんどん近づいてきます。
恐ろしくてたまりませんでしたが、何が自分を引きずっているのか、確かめずにはいられなかったので、振り返りました。
すると、森の中で一際大きな大木の幹に真ん中に、大きな黒い穴が開いているのが見えます。人間を丸のみにするのを待ち構えているかのようです。
その時、不思議な考えが頭をよぎりました。
確かに真っ黒な穴なのに、何故かそれが、人間の顔のように見えたのです。
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