第一試合 部活動vs自分

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 入部から二ヶ月経ったことで、部活動の練習メニューにも変化が訪れた。 「今日から一年生も楽曲の練習に入ります。まずは一ヶ月後に始まる野球部の応援楽曲からです。まだメンバーは発表されていませんが、基本的な曲は例年と変わりないので」  部長からそう指示された瞬間、一年生のいる場から感嘆の息が漏れた。 「やった……やっと本格的に練習…………!」  今までは体力作り中心に、マウスピースで音を鳴らす基礎的な練習しか行っていない。  本格的に練習できること、さらに野球部の応援という最も私が望んでいたイベントであるだけ高まっていた。    だが、ここでも現実に打ちのめされる。 「全然、鳴らない…………」  久し振りに所持するトランペットが全然鳴らなかった。  音を出すことに必死で、楽器を支える腕は痙攣し、構えの姿勢もだらしない。  あの時テレビで見たように、空に向かってまっすぐ吹くなんてことは持ってのほかだった。  マウスピースで音を出す練習はしていたはずなのに、こうも変わるものなのか。   「橘さん、そんな恰好だと楽器がかわいそうだよ」  同じトランペットパートのリーダー、一ノ瀬(イチノセ)先輩が呆れたように言う。  清潔感のあるストレートの黒髪に、切長の目元からも、言葉以上の気迫が感じられた。 「す、すみません……」 「この二ヶ月何やっていたの。そんな音じゃ、応援される方が恥ずかしいものよ。諦めたほうがいいかもね」  先輩の言葉が胸に刺さる。同じパートの同期たちも、軽蔑するような目で私を見る。  同期は元吹部ばかりであることから、当然だがこんな初歩的な場所で躓く人なんてほぼいない。  あまりにも稚拙な自身のレベルに、目前が真っ暗になった。
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