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「た、大変だったんだ」
そう呟くと、翔吏は吊り上がった目でこちらを睨む。
「他人事じゃねぇだろ。てめぇも部活やってんなら、さっさと家帰って練習しろ」
「すっ、素直に同情してあげたのに!」
予想外の反応にムッとなる。
「んな生ぬるい言葉なんていらねーよ」
翔吏は眉間に皺を寄せたまま、再びバットを構える。
「少しでも時間あんなら、てめぇの為に時間を使え。俺の応援の時、下手な音出したらただじゃ済ませねぇぞ」
「試合、出る気満々じゃん」
「当然だろ。一年からベンチ入りして初めてスタートラインに立てんだから」
翔吏は眉間に皺を寄せて宣言する。
あまりにも強気な言葉に、呆気にとられる。
「た、楽しみにしてるから!」
感情的にそう叫ぶと、足早にその場を去った。
「何なのよ、あいつ…………」
球児とひとくくりにしてみるのは良くない。やっぱり一人ひとり違うものだ。普通、あそこまで傲慢になれるものだろうか。
だが、そんな態度に比例して彼の努力が空気から感じられた。
真っ直ぐに上を目指す彼の姿に、どこか尊敬してしまっただけ悔しく感じる。
「このまま辞めたら、笑われるだけだわ」
私は頬を叩いて気合を注入すると、足早に駅へと向かった。
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