第二試合 夏vs自分

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第二試合 夏vs自分

 次の日の早朝五時。  私は地元の川辺を走っていた。  昨日、楽器を所持して改めて体力が重要だと痛感した。  今までは演奏と体力作りの繋がりが感じられず、陰で休んだりと情けない行動を取っていた。だらしない過去の自分に恥ずかしくなる。  昨夜の翔吏との会話から思考を切り替え、少しでも自分に投資しなければいけないと考えての自主練だ。  音すら鳴らせない今のままでは、届く思いも届かない。  特に私は、同期と同じ立ち位置に立てていないのだから、人一倍努力をしなければいけないんだ。  あれだけ走るのが嫌だったのに、自ら行動に移っているなんて、二日前の自分は考えてもいないだろう。  六月に入ったことですでに日は昇っているものの、早朝であることから周囲は閑散としていた。  どちらかといえば田舎に分類される私の地元には、家から徒歩数分の場所に大きな川がある。この周囲では運動をしている人をよく見かけるので、ここなら走っても問題は無いだろう、と朝から訪れていた。  校舎内とは違い、風も通れば地面も土で足の負担も少ない。校舎内での運動に慣れていたことから案外いけるものだ。  爽やかで澄んだ空気が心地良い。川で冷やされた緩やかな風が、ジワリと浮かぶ汗を撫でる。  朝から運動するのは、これほど気持ちがいいものなんだ。  無心になって走っていたが、ふと高架下に見覚えのある姿が目に入る。
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