第二試合 夏vs自分

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「速水さん?」  思わず足が止まる。  高架下には、一心にバットを振る速水さんの姿があった。  スポーツブランドのTシャツにジャージ姿で、頭にはタオルを巻いている。  大きな身体でスイングするその姿は豪快だった。  茫然と視線を送っていたことで、速水さんも私に気が付く。  寝間着同然のジャージ姿であることで恥ずかしくなり、私は露骨に顔を逸らしてしまった。 「ははっ、身体はでかいしスゲー食うけど、悪い奴じゃないよ」  速水さんは抱えていたバットを下ろして爽やかに笑う。  私は慌てて手を振る。 「やっ、まさか地元にいらっしゃるとは思わなくて……そそそんなんじゃないです」 「あ、君もここが地元なんだ」 「君も?」 「俺もここが地元なんだ」  ちなみに家はそこ、と速水さんは後ろを指差す。馴染みの道に位置しているだけ目を見開く。 「ま、毎朝通ってます!」 「そうなの? じゃあさ、雪村病院前の桜の木も知ってる?」 「一本だけ満開になるやつ!」 「そうそう。じゃ、このパン屋はわかる?」  そう言って速水さんは、近くに置いてある紙袋を指差す。 「モモヤマベーカリーだ」 「正解。生粋の地元民だ」    速水さんは満足気に笑うと、腕を下ろした。
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